あたりまえの幸せは、あたりまえではないのかもしれない

 昨日、保育園で子供の歯が抜けた。にっこり笑うと前歯がない。歯が抜けたとき、泣かなかったことを自慢していた。

「ほんとはね、かあちゃんに会いたくなったの」とそっと耳打ちしてきたのは、内緒だ。まだぐらぐらしている歯が何本かあるわけだが、子供はそのたびに大人になっていくのだろう。ぼくはもう大人だから、なにか身体的な特徴としてはっきりと年齢を確認できるものはなく、ただなんとなく年をとっていくに違いない。子どもの抜けた歯を小さなポリ袋に入れて、冷蔵庫にセロハンテープで貼り付けた。カニのはさみみたいな恰好の乳歯。毎日の変わらない風景は、たぶん有限で、それもまたゆっくりとその形を変えていく。当たり前に過ぎていく時間に感謝をしつつも、子供がこの先大人になっていくにつれて、少しずつ風景が変わっていくことを楽しめたらいいな、と思う。朝、食卓の向かいに座る子供は、一本歯がないかわいらしい口をパクパクと動かして、ご飯を食べている。僕はそれをぼんやり眺めるのだ。

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